第一夜
著者:shauna


 夏・・・ナツ・・・なつ・・・


 「ってことで瑛琶。怪談やるわよ!!!」


 ・・・

 「えっと・・・ごめん。訳わかんないんだけど・・・」

 夏休みに入り、大オケ研の練習を一通り終わった午後2時。まだ外は熱いから少しエアコンの掛かった図書室で宿題を片付けていこうと一人トボトボ廊下を歩いていたらいきなり肩を掴まれ、転倒しそうになるのを必死に堪えて振り返るとそれはとある部長だったのだが・・・

 躑躅森夏音の発言に有栖川瑛琶は冷汗をかきながら静かに抗議した。

 顔こそ笑っているものの、そのオーラが放つのは明らかな嫌悪の感情。

 それはもう、誰でもわかる程に強いものなのだが・・・

 「集合場所は我が科学研究部の部室。時刻は本日7時半から。参加者は科学研究部と恵理りんとあなた。以上よ!!異論は瑛琶以外なら聞くわ!!!」

 そんなこと知るか!!と言わんばかりの全力無視で夏音が叫んだ。

 「うん。わかった。全力で拒否するわ。」

 「じゃあ、私は拒否することを拒否するわ!!!」

 ひどっ!!!

 「まあ、話ぐらい聞いてよ。」

 散々なヤリトリなど気にせずに夏音が続ける。

 「知ってると思うけど、季節は夏。」
 「うん。これだけ暑ければわかってるよ。」
 「今年の夏は特に暑くって、正直参ってるわけよ。」
 「うん・・・そうだね。今年は平均気温高いって言うし・・・」
 「だから私は考えたの。」
 「うん。」
 「そうだ。百物語をしよう。って・・・」
 「うん。京都行くみたいなノリで決めるの止めよっか・・・」
 「ってことで百物語するわよ。」

 もう会話が一切噛み合ってなかったりするが、夏音はそんなことを気にしない。

 「まだ訳わかんないことがたくさんあるけど・・・とりあえず、私は行かないから。暑さ凌ぎならエアコンでも十分だし・・・」
  怖いのは嫌いだから全力で拒否させていただきます。

 そう言って踵を返し、さっさとその場を立ち去ろうとする・・・と・・・

 「うあっ!!」
 再び夏音に肩をさっきより強い力で掴まれ、また後ろに倒れそうになる。

 「まぁまぁそんな嫌がらずに・・・ユー、一緒にやっちゃいなよ。きっと楽しいって・・・」

 どっかの芸能会社の社長みたいな言い方で誘う夏音。

 ってか目が怖いんだけど・・・

 「夏音・・・あなたさ・・・」
 「うん?」
 「ただ楽しみたいだけでしょ?」

 「まっさか〜違うわよ。怖い話をして怯える瑛琶を見て楽しもうなんてこれっぽっちも思ってないわよ。」
 「ふ〜ん・・・」
 
 それに抗議するように夏音は手を腰に当てて背筋を伸ばし・・・
 
 「何よ〜!!疑り深いわね!!!私がそんな酷いことするわけ・・・」

 
 ゴトッ(背筋を伸ばした直後にポケットからデジカメが落ちる音。)


 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 凍り付く空気。

 「クッ・・・やるわね。さすが瑛琶。私の本心を見抜くなんて・・・」
 「ってことで断ってもいいわよね。」

 ここまで分かっていて、自ら危険地帯に飛び込む気はない。

 「断ってもいいけど・・・」

 夏音も渋って譲歩してくれた。これでひとあんし・・・

 「ところで瑛琶・・・1年の時に言った宿泊研修覚えてる?」

 え?

 「宿泊研修って、あの入学してすぐに行ったみんなで仲良くなりましょう的なイベント?」
 「ええ・・・そうよ。あれ楽しかったわね。」

 何この話の急回転。何に脈絡もなかった気がするんだけど・・・

 「ええ・・・そうね。楽しかったわね。」
 「私達同じ部屋だったんだよね。」
 「そうそう。夜遅くまで枕投げとかしたっけ・・・」

 とりあえず、楽しかったのは事実だからそう告げておく。

 「ところでさ、瑛琶・・・」
 「何?」

 胸のポケットから一枚の写真を夏音が取り出す。

 やさしく渡してくれた手からそれを受け取り、見てみると・・・
 そこには浴衣がはだけて胸元とか太腿とかがかなりキワドイ所まで見えてしまっている写真が・・・

 「このバカ女ぁ!!!!なに人が寝てる姿、激写してるのよ!!!!」
 「いや〜・・・あまりに可愛かったからつい・・・でも困ったわ。瑛琶が来てくれなかったら私あまりのショックでその写真を大量に焼き増しして、校内にうっかり落としちゃうかも・・・」
 
 もうヤダ!!!ホントヤダこの人!!!

 「・・・・・・一つ聞くよ。」

 「何?瑛琶?」
 
 「まず、1つ目は明も参加させること。2つ目は参加したらその写真のネガ、データカード、焼き増しした写真まで・・・とにかくその写真に関係する物は全部私に渡すこと。この条件で承諾できる?」

 「もちろんよ。さぁ!!!楽しくなってきたわ!!!」

 げんなりとする瑛琶に対して、夏音はいつにも増して活き活きとしていた。




 らくがき
 はい。というわけで、誰も待っていないのに新シリーズを始めます。
 どうも、shaunaです。
 さて、これを書くに至った経緯をお話しますと・・・

 「夏」→「怪談」→「そういえば、彩桜にはホラー系って少ないな〜」→「瑛琶は怖いの苦手だし、上手くいけば明との甘いシーン掛けるかも・・・」→「っし!!書くか!!!」

 如何でしょうか?shaunaの小説はこのように綿密極まりない設定の元に創りあげられているのです。
 なんか学校の授業中に「授業めんどくさいから次に書く小説のネタでも考えっか〜」という状況下でノリで決めているように感じるかも知れませんが、そんなことは断じてありません!!そう見えたらあなたの心が汚れているのです!!間違いありません!!!(←少し黙れ!!!)


 それはさておき・・・
 まあ、この作品は上記の通り、ノリで書いているので、管理人のルーラー閣下の「在りし日の思い出」やあくあ嬢の「科学研究部日誌」のついでに”読んでやるか”という軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

 まあ、怪談なので読むときは真夜中に部屋を暗くして画面に出来るだけ近づいてみることをお勧め・・・(強制終了。)

 上記のようなことはなさらないでください。でないと、私のようになっちゃいますよ?(眼がとても悪いのです。)

 それではスペリオル共々、こちらもよろしくお願いします。

 8月いっぱいには完結するはず。

 では。



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